ボン・ボヤージュ便り

北京の路地巡り


北京の狭い路地に興奮

 先月、北京に旅行しました。北京といえば、万里の長城や紫禁城が有名。でも、ガイドブックには載っていないような場所にも、旅の魅力は詰まっています。
 故宮博文院の地殻を歩いていると、地元の少年が、人力の三輪車で路次を観光しないかと誘ってきました。観光地での客引きは要注意。でも、その少年があまりにも利発そうで好感の持てる子だったので、乗ることにしました。
 後でトラブルにならないよう、地図に印をつけてコースを確認。料金は、少年が「30」と言うので、二人で30元しか払わないことで交渉が成立。早速、少年は先輩らしき年上の男性にお金を払って三輪車を借り、目を輝かせて戻ってきました。

 三輪車で回ったのは、近代的な高層ビルが建ち並ぶ大通りから入ったせまい路地。四合院という北京の伝統的建築様式が残り、静かで美しい町なみが続きます。まるでタイムスリップした気分。路地は、屋台や露店、自転車と人々でごった返し、下町の活気でいっぱい。迷宮のような路地を、三輪車でずんずん進んでいくのは、まるで古い映画のワンシーンの中にいるようで興奮してしまいました。
 これで30元とは安すぎる。大満足で礼を言い、30元を渡そうとしました。すると少年は、30元でなく、30"ドル"と言うではありませんか。「そうか、そういう手もあったのか」と感心している場合じゃありません。ここですんなり払ったら、ますます日本人観光客がなめられてしまうと思い、何とか15ドルまで値切りました。

 働き者で、けなげな少年だと思っていたのに、とても残念。乗り物の値段を事前に交渉する際は、数字と単位まで紙にちゃんと書いて、確認したほうがいいでしょう。
 北京の旧市街や下町には歩いて回れる路次もたくさんあります。名所旧跡に飽きたら、ちょっと路地裏に入って、庶民の生活に触れてみてはいかがでしょう。ノスタルジックな世界に心が安らぎます。
(旅行用品専門店ボン・ボヤージュ 店長・和泉勝美)

(熊日日々新聞・夕刊2000年11月1日号掲載)


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