ボン・ボヤージュ便り

海外のチップ事情


チップとは感謝の気持ち

 私たち日本人が、旅行で戸惑うものの一つがチップ。団体旅行中は添乗員がまとめて払ってくれるので心配ないけど、個人で欧米などを旅するとなると事情は違います。
 現地の空港に着き、ホテルまでタクシーで行くと、運転手に料金の5−10%のチップを渡します。ホテルに着くと、荷物を運んでくれたベルボーイにチップ。ルームサービスを頼んだり、フロントでコンサートなどのチケットを手配してもらったときもチップ。レストランやカフェ、街中のトイレでもチップ。
 このように、ただでさえ慣れない外国の通貨で、朝から晩まで5−20%の暗算に空け暮れないといけません。ホテルやレストランの格、サービスの質によって相場は違うし、多すぎても少なすぎてもいけないのです。

 私のタイでの失敗談。夕方遅くにバンコクに着き、フライトの疲れで頭はもうろう。でも、とにかく荷物を運んでくれたベルボーイにチップを渡さないといけない。と、その瞬間、ボーイの態度が緊張したのが分かり、それまでぼんやりしていた思考が一気にはっきりしました。渡そうとしている紙幣をよく見ると、ゼロが一つ多い。何と、チップの額を一けた間違ってしまったのです。
 お礼を述べている彼に、間違いだから返して、とも言えません。ボーイが出ていった後「こんな間抜けがいるから日本人は軽く見られるんだ」と、私はひたすら自己嫌悪。翌朝、恐る恐るロビーに降りると、例のベルボーイが飛んできました。そして、タクシーや観光の手配をしてくれたり、写真を撮ってくれたりと、いたれり尽くせり。そのホテルに滞在した5日間は、想像以上の快適さになったのです。

 チップとはサービスに対する感謝の気持ちなのだから、堅く考えすぎて旅を楽しめなくては本末転倒。スムーズに渡すため、日本円にして100−200円分の現地通貨を、取り出しやすいところに準備しておくといいでしょう。

 さて、日本に戻ってあれほど悩んだチップから解放されると、逆になんだか物足りなさを感じてしまいます。チップやマナーの違い、そんな煩わしさも含めて、旅とは面白いものだと思います。 (旅行用品専門店ボン・ボヤージュ 店長・和泉 勝美)

(熊日日々新聞・夕刊2000年7月12日号掲載)

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