|
|
■仏の人類、歴史学者トッド氏に聞く |
イラク攻撃準備に突っ走る米国を見て、フランスの人類学者、歴史学者であるエマニュエル・トッド氏(52)は「崩壊しつつある帝国だ」と指摘する。イラク問題の本質は、そんな米国と対抗勢力として浮上し始めた欧州との対立であり、イラクのフセイン大統領はドラマの脇役にすぎない、というのが同氏の見たてだ。 |
欧州と対立が軸 イラク端役 |
─イラク危機では、米国の帝国的な振る舞いが目立ちますが… 「我々が目撃しているのは、帝国としての米国の崩壊過程だ。軍事的に超大国でも経済的には弱体化が著しい。貿易赤字は増大し続けている。誰もが米国にカネを置いておけば安心と思っていたが、エンロン事件などでそのカネが日々の消費で消えているだけであることに気付いた。米国システムの脆弱さがわかり、 ドルも下がっている」 「『悪の枢軸』論は、それでも米国は必要だと世界に思わせるための戦略だ。だが『悪者』のうち北朝鮮は中国がからむ。イランは民主的にさえなりつつある。そこで実際は取るに足らない力しかないイラクを選び、力んでいるのだ」 ─どこが米国に対抗できるのでしょう 「米国のラムズフェルド国防長官は、仏独がイラク問題で共同歩調を取る姿勢を見せたとたんに『古い欧州』と軽蔑してみせた。この反応の早さはむしろ、仏独を推進役として『大国』になりつつある『新しい欧州』への恐怖感を示している」 「米国にとって深刻なのはフランスの抵抗よりシュレーダー独政権の『戦争反対』だろう。世界の経済大国は米独日の三つ。米国がほかの2国を支配することで秩序ができていた。その1つが、造反すればシステムは崩壊するからだ。ドイツの離反は歴史的だ。欧州経済は堅調だし、しだいにシステムとしてもできあがりつつある。つまり、米国と軍事的、経済的大国である欧州が対立しているのだ。フセイン大統領は、この両者が繰り広げるチェスの『ボーン』(歩)の駒見たいな役割しか担っていない」 ─だが欧州はイラク問題で分裂気味です 「たしかに、欧州の8人の首脳が親米を訴える公開書簡を発表した。しかし、これは個人的なもので8人の背後の国民はついてきていない。人々は欧州としてまとまっていて、米国寄りではない」 ─米国は仏独抜きでも戦争をしそうです 「欧州の主要国が同調せず、膨大な貿易赤字を抱えてドルが下がり続ける中、どんな戦争ができるのか、湾岸に15万人の兵力を置けば、1週間で10億ドルの出費だ。ところが、米国は貿易赤字を埋めるために1日に15億ドルの資金を必要としている。本当なら戦争など避けたいはずだ。だが、政府もメディアも一体になったようなこけおどしを続けたために抜き差しならなくなっているのだろう」 |
朝日新聞2003年2月8日朝刊<国際> |
Store Specializing in Traveling Outfit *トップページへ戻る* TEL : 096-359-8691(代)FAX 096-359-8697 E-mail:voyage@aminet.or.jp Copyright(c)2000 BonVoyage Allrights reserved. |