1991.3.15 BonVoyage

“いったい誰が戦争を望んでいるのか!”

■限られた人にすぎない
 いったい誰が戦争を望んでいるのか、よくよく考えていくと、タマネギの皮をむくように中身は小さくなるばかりだ。北大西洋条約機構(NATO)の中核であるドイツとフランスがイラク攻撃に反対している。ロシアも反対である。

 英国をはじめ、イタリア、スペイン、旧東欧諸国などが米国を支持しているという。しかしそれは政府の次元で、各国の世論は必ずしもイラク攻撃に賛成ではない。

 ドイツのフィッシャー外相がこう語ったそうだ。いまの私達の民主主義は米国のおかげだ。その民主主義はこう教える。ある政策を選択するときには国民を説得しなければならい、と。  ドイツの国民は圧倒的に戦争反対である。戦争回避の道が残されている以上、私は国民を戦争に向けて説得することはできない。

国際協調派パウエル国務長官への期待
 米国世論も決して一枚岩ではない。ブッシュ大統領を信頼するという人は、パウエル国務長官を信頼するという人の3分の1近くにすぎない。そんな世論調査結果が最近でた。

 このごろ強硬姿勢を見せるパウエル長官だが、米政権内では国際協調派の先頭に立つ。軍の英雄たちがイラク攻撃に消極的な態度を示しもした。

 たとえば湾岸戦争時の指揮官シュワルコフ将軍である。先月末、イラク攻撃について米紙のインタビューに答え、湾岸戦争時と現在とでは状況が違うと指摘した。「いまは白黒つけられるような事態ではない。どの道をとるにせよ慎重さが求められる」と。

 皮をむいていって行き着く戦争推進派は相当限られる。



朝日新聞2003年2月12日朝刊<天声人語>



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