いやな年の暮れだ。イラク派兵なんて、もし向こうで戦闘になったら、100%憲法違反である。その重罪の責任は、だれが、どうとるというのか。
そんないやな年の暮れでも、いつもと同じに年は暮れる。で、今年も、「広告批評」誌のCMベストテンが発表になった。@ 町中の曲芸であっと僕らを驚かせたサントリーの燃焼系アミノ式、A
金髪の美女が窓から入ってきた雲とたわむれるエールフランス、B「つまらん!」の水性キンチョール、が今年のベストスリーである。
3つとも知らんという人はかなり浮世ばなれした人だが、「広告批評」の12月号を読むか、12月12日の「ニュース23」を見てほしい。三者三様、まったく違うタイプであるところに、今年の混迷状態というか、模索ぶりが反映している。
「燃焼系アミノ式」が見せてくれる曲芸の数々は、芸で人寄せをして物を売る広告の原型みたいなものだろう。ぼくの子供のころには、近くの原っぱにサーカスのテントが立つと、もう前の晩からドキドキして眠れなかったものだが、いまやマチの曲芸師たちが、駅のホームや会社の屋上や公園にまで現れるようになったらしい。人間ワザとは思えないものを見るのが、昔から人間は大好きなのである。
エールフランスのCMは、ひたすら美しい。美女が超高層マンションの窓を開け、手をのばし、流れる雲をちぎってパフにしたりコートのファーにしたり…。飛行機の乗り心地のよさをフランス流に描くとこういうことになるというサンプルみたいなものだろう。いやな時代でも、人はせめて広告に夢を見たい、浮世を忘れたい。これも広告の原点の一つと言えるかもしれない。
キンチョールの「つまらん!」のことは、この欄で前に書いた。大滝秀治が「つまらん!」と言っているのは、息子のモットモらしい商品説明に対してではない。いまや20世紀型のCMはすべてあきあきした、つまらん、と言っているのであって、これこそ、究極の原型がえりというものだろう。
ところで、さっきテレビで聞いたイラク派兵についての小泉さんの説明に、ぼくは思わず叫んでしまった。「つまらん、お前の話はつまらん!」
(コラムニスト)
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